『感覚』『知覚』『認知』『認識』の違いを考える

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人間は五感を通じ外界から情報を取り込むことで多種多様な行動をすることができます。本記事では『感覚』『知覚』『認知』『認識』の違いを理解し、人間が外界から得た情報をどのように処理しているのか考えていきます。

なお、人の心のメカニズムは解明されていないことが多く、本記事の内容は認知心理学に関する情報に基づいていますが通説を含んだものとなっていることをご了承ください。

記憶の多重貯蔵モデル

「記憶の多重貯蔵モデル」とは、人間が外界から得た情報の保存過程を説明したものです。このモデルでは、人間の記憶は「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」に分類されます。

感覚記憶

感覚記憶は人間が日常的に外界から受け取る情報の全てを一時保存する記憶です。感覚記憶で得た情報の保存時間は0.5秒未満と言われています。人間が感覚記憶で保存された情報の全てを認識することはありません。必要な情報やその時注意を向けている情報以外は自動的に削除されます。

短期記憶

短期記憶は一般にワーキングメモリ―とも呼ばれるもので、感覚記憶で削除されず人間に認識された情報を一時保存する記憶です。短期記憶は必要な情報を一時的に保存するもので、保存期間は30秒未満と言われています。

また、個人差はあるものの同時に記憶できる情報の数は7±2程度と言われています。短期記憶で同時に記憶できるものの数は「マジカルナンバー」と呼ばれ、マーケティングで用いられる基本的な考え方のひとつとして知られています。

長期記憶

長期記憶は半永久的に失われなくなった情報を保存する記憶です。短期記憶で保存された情報が「リハーサル」と呼ばれる情報処理をされることで長期記憶となります。

リハーサルは「維持リハーサル」と「精緻化リハーサル」に分けられます。

「維持リハーサル」は短期記憶の情報を反復して保存を繰り返すことです。言われたことを何度も繰り返しつぶやいて忘れないようにすること等が該当します。また、勉強したことを後日復習するように時間を空けても効果があります。

「精緻化リハーサル」は既に長期記憶されている情報と関連付けたり、その情報の法則や構造を理解することで忘れにくくすることです。例えば書いてある数字を全て覚えるのに「52643781」では難しいですが、並べ替えて「12345678」という法則を見つけられれば簡単になります。

精緻化リハーサルを併用することで維持リハーサルだけよりも長期記憶に保存されやすくなります。

 

認知処理プロセス

記憶の多重貯蔵モデルで人間が外界から得た情報の保存過程と保存期間を確認しました。ここからは人間の意識がどのように情報を処理するのか考えていきます。

【1】感覚

感覚は人間のもつ五感で外界から情報を取り込むことです。感覚で得られた情報は感覚記憶に一時保存されます。感覚は常に働いているため取り込んだ情報は次々と削除されます。

【2】知覚

知覚は感覚記憶で得られた情報を整理して選別することです。知覚によって選別された情報は短期記憶に保存されます。

このとき、感覚で得られた大量の情報の中から特に必要な情報を選別することを「選択的注意(または選択的知覚)」と呼びます。

例えばお店で商品を探しているとき、リンゴを見つけたいと思っているとリンゴやリンゴに似ているものが選択的注意で処理され目に入りやすくなります。

【3】認知

認知は知覚によって選別された情報が何なのか長期記憶に保存された情報と照らし合わせて判断することです。

リンゴの例を続けると知覚の段階では「赤くて丸みがあり固さがある」など感覚で得られた情報のままですが、得られた情報と過去の知識や経験を統合することでリンゴあるいはリンゴではないと認知できます。

知覚で選別された情報を長期記憶と照らし合わせることを「想起(または検索)」と呼び、さらに「再生」と「再認」に分けて考えられます。

「再生」は長期記憶から完全な記憶を想起することです。

記述式の問題を解くイメージで、「ちょうききおく」を漢字で記述するには「長期記憶」という情報を完全に記憶していないとできません。そのため再生を必要とする認知処理は基本的に難しくなりやすい傾向があります。

「再認」は長期記憶に保存された情報が不完全であったも実行できる想起です。

選択式の問題を解くイメージで、「長期記憶」という漢字を正確に覚えていなくても選択肢にあれば長期記憶に保存した断片的な情報と統合して解答することができます。

再認は長期記憶が情報を「体制化」していることで可能となります。体制化は情報をネットワークにして保存することです。

体制化された長期記憶はキッカケとなる情報が与えられれば再認によって想起されやすくなります。

例えば、昔の知り合いについて質問されて咄嗟に思い出せなくても関連する情報を与えてもらうと思い出せることがあります。

【4】認識

認識は認知した情報を個人の嗜好や価値観に基づいて「好き嫌い」「良し悪し」「必要不要」などの解釈を加えることです。

認識の情報処理ではさらに「選択的歪曲」と「選択的記憶」が行われます。

「選択的歪曲」とは、価値観や先入観に合うように情報を認識する傾向のことです。例えば、何でもない行為であっても好意を持っている人とすると選択的歪曲により特別な行為と感じやすくなるなどです。

「選択的記憶」とは、嗜好や価値観に一致すると認識された情報を優先的に記憶することです。選択的記憶をされた情報は他の情報と比較して長期記憶されやすくなります。

選択的注意の代表例

人の記憶と認知処理の過程について考えていきました。

最後に知覚の項目で説明した選択注意の中で代表的なものをいくつかご紹介します。

カクテルパーティ効果

カクテルパーティ効果は、人が多く集まったパーティ会場で誰かが自分の名前を呼んだ時すぐに気付けることに由来します。

特に注意を向けていなかったとしても、感覚は常に働いており感覚記憶に情報を保存し続けています。「自分の名前」という情報は繰り返し情報処理されているものであり、選択的注意によって認知されやすいのです。

カラーバス効果

カラーバス効果は、特定の物事に関心を持つようになると関連する物事にも気づきやすくなるという認知処理です。知覚は感覚で得た情報を選別しているに過ぎません。そのため似たような情報を必要な情報と判断し認知してしまうのです。

カラーバス効果は心理学用語ですが、マジカルナンバーと同様にマーケティングの基本的な考え方のひとつとして知られています。

ストループ効果

ストループ効果は、視覚から同時に取り込んだ2つの情報が干渉し合い認知処理が難しくなることです。

例えば、文字の色を答える問題で「青色のペン」で「赤という字」が書いてあると咄嗟に「文字の色は青」と判断できなくなることがあります。

総括

本記事では、記憶と認知処理の過程について考えていきました。今回は触れませんでしたが、他にも「空間知覚」「錯覚」「運動知覚」など人間の認知能力は多岐に渡ります。

人間がどのように情報を認知するのかはマーケティングやサービスにも応用ができます。

また、当サイトは「ゲームデザイン思考」の情報発信をしておりますが、プレイヤーの認知処理を考慮することはゲーム体験を作るうえでも極めて重要です。

あとがき

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事の内容は筆者個人の考察に基づいたものです。

ご意見ご感想がありましたらページ下部のコメント欄に是非お書きください。また本記事について各SNSで「#ゲームデザイン思考」をつけて投稿いただけると幸いです。

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